高野白山の九州易学開運学院

徒然の記

短編小説シリーズ~監獄(その7)

監獄(その7)

以前は決して来ないことはなかっただけに、ひどくがっかりしてしまった。

靴をはいたままベッドに寝そべって天井をじっと見つめた。

ローザが店の鍵をもう一つ別に持っているということで馬鹿にされてきて、そして今は見捨てられているお人好しの彼は心を痛めた。

考えれば考えるだけ傷つかねばならなかった。

眠れないほど頭痛がして、そして急に眠ったかと思うとすぐ目が覚めた。

消え入りそうな悲しさで目が覚めるのだ。

ダムが刑務所を出たあと、どこか知らないところへ行ってしまったことをふと想った。

たとえば、あの55ドルを持って逃げ出したとして、どこかで彼にめぐり逢うことがあるだろうか。

ダムは愉快な中年男だったが、会ったとしても自分は彼のことがわからないかも知れない。

人生を想った。

人は、望むところのものが現実にはかなえられないのだ。

どんなに一生懸命やっても、思い違いをして誤ちから逃れられはしない。

監獄の中にいるため外界の大空や大海を見ることができないのだ、

ただ誰も監獄とは言わないだけで、たとえ人生に監獄という名をつけたとしても、その中にいる人には理解できないのだ。

憂うつな大気が彼を落ち着かせた。

自分自身にも他人にも想いやりとかいたわりの気持ちを持つことなく、横たわって動かなかった。

だが、1階へ降りた時、ローザにうるさく言われず長く自由な時間を持ったことを皮肉にも面白いと思うことになった。

~続く~

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