監獄(その6)
そんなことがあって、次は一番上の棚に置いている大皿を全部きれいに空にしたのだが、彼女は怪しむふうもなくその下の棚に手を出し、何かほかの物を盗んだ。
ある日の月曜日、5セント白銅貨や10セント銀貨のばら銭を大皿に置いていたのに、それはそのままにしてお菓子だけを盗むのでちょっと訳がわからなくなった。
いつも物想いにふけっているのを変なふうに疑って、近頃どうしてチョコレートを食べるようになったのか、とローザが尋ねた。
返事をしなかったので、小さい女の子以外の店に来る女性を疑いの目で見始めた。
一発、顔面にお見舞いしたら面白いだろうという気になったが、心に背負い込んでいるものを知られさえしなければたいしたことはないのだ、と思い直した。
もっと直接的なことをしなければならない。
でないと盗みをやめさせるのがますます難しくなるだろう。
力強くあるべきだ。
そう、彼は満足すべき計画を考え出した。一人っきりの時を見はからって、大皿にキャンディー棒を2つ残して、その包みの中に彼女が読める程度のメモを入れる。
メッセージを幾通りも作り、できばえがいいものを選んで、細長い厚紙にきれいに書きチョコレートの棒の包みにすべり込ませた。
それには、「これ以上はいけない、さもないと君の生活が駄目になってしまうよ」と書いた。
サインを「一人の友人より」にするか「君の友人より」とするか迷ったが、結局、「君の友人より」にした。
金曜日だったが、月曜日になるのがたまらなく待ち遠しかった。
だが、月曜日になっても娘は現れなかった。
長い間待ったのだが、ローザが降りて来たので2階に上がらなければならない時間になっても来なかった。
~続く~