高野白山の九州易学開運学院

徒然の記

重耳(ちょうじ)

晋の文公(BC696年~BC628年)を素材にした重耳(ちょうじ)という歴史小説があります。

作者の宮城谷昌光氏は、主人公より副主人公を描いた部分がいきいきとして面白いという作風を持つ小説家です。

「重耳」は、秀逸な書き出しから謎と波乱を予感させて、これに匹敵する書き出しはラフカディオ・ハーンの「茶碗の中」という怪奇小説のほかは思い出せません。

「重耳」の書き出しをご紹介しましょう。

「口をあけると、その者は、晋人であることがわかる。

歯が黄色いからである。

そのように、かれらはあるとき黄河の支流である汾水のほとりに国を樹て、黄色い砂の降り積もる高地の上で暮らしつづけた。

が、晋人とは、何者であろう。

謎といえば、これほどの謎はない。」

これは、もはや散文というより詩歌に近いといったほうがいいでしょう。

たった6行を書くのにどれほどエネルギーを使ったか、司馬遼太郎先生が絶賛するのも無理はありません。

日本語世界は、宮城谷昌光氏により豊かに奥深くなっています。

TOPページ

ページの先頭へ