今津人形浄瑠璃は、明治24年に隣村の大原操り人形(おおばるあやつりにんぎょう)という人形座から諸道具一式を譲り受け、福岡市西区今津を拠点に創設されて以来、130年になります。
一座の名称を恵比須座といいますが、小学生だけでも立派に浄瑠璃を演じることができます。
人形の所作(しょさ)と太夫(たゆう)の語り、そして三味線の演奏という三位一体で成り立つ人形浄瑠璃が表現する激しい真実性には脱帽するほかありません。
歌麿が描く醜い役者絵のように、神楽という神前舞踏劇の伝統を忘れた歌舞伎は、薄っぺらなネタを嘘っぽく演じるだけですが、人間存在の哀しさ、愛しさ、浅ましさをとことんえぐり出し、演じきってみせる人形浄瑠璃「傾城阿波の鳴門」(けいせいあわのなると)に比べれば、アニメ映画の傑作である「千と千尋の神隠し」さえ色あせて見え、幼稚園教材のように思えてくるのが不思議です。