東京都台東区浅草の伝法院は、浅草寺の敷地にある塔頭で、伝法院南側の通りを伝法院通りといいます。
この通りは東西約200m程度しかありませんが、歩いて楽しむストリート景観が広がっています。
屋根の上を見ると、片膝を立てた白波五人男の一人弁天小僧菊之助や千両箱を運び出す途中の鼠小僧次郎吉、路上には白波五人男の首領日本駄右衛門の人形が生きているように飾られています。
壁面には、火の見櫓も設置され、遊び心充分というところでしょうか。
日本文学史に燦然と輝く名セリフ、弁天小僧菊之助の啖呵(河竹黙阿弥作)をご紹介しましょう。
七五調の口上が終わると、娘姿から片肌をぬぎ大あぐらをかいて開き直ります。
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「知らざあ言って 聞かせやしょう
浜の真砂と 五右衛門が
歌に残せし 盗人(ぬすっと)の
種は尽きねぇ 七里ヶ浜
その白浪の 夜働き
以前を言やぁ江ノ島 で
年季勤めの 児ヶ淵(ちごがふち)
江戸の百味講(ひゃくみ)の 蒔銭(まきせん)を
当てに小皿の 一文字
百が二百と 賽銭の
くすね銭せぇ だんだんに
悪事はのぼる 上の宮(かみのみや)
岩本院で 講中の
枕捜しも 度重なり
お手長講と 札付きに
とうとう島を 追い出され
それから若衆(わかしゅ)の美人局(つつもたせ)
ここやかしこの 寺島で
小耳に聞いた 祖父(じい)さんの
似ぬ声色(こわいろ)で 小ゆすりかたり
名せぇ由縁(ゆかり)の 弁天小僧
菊之助たぁ 俺がことだ」