1 安定の思想
ア 概要
安定の思想については、天地否と地天泰という二つの大成卦で説明できる。
天が上にあり、地が下になるというノーマルな形の天地の卦が否定を意味し、逆に地が上にあり天が下になる、という地天の卦が安泰を意味するのはなぜか?
天地否は柔である地の上に、剛である天が乗り、地は今にも押しつぶされそうで不安定感を表し、地天泰は、剛である天の上に、柔である地が乗っているためバランスがとれ平穏である、とみるのである。これは易経独特のバランス感覚である。
イ 地天泰
泰は、おおきい、やすらか、という意味で、安泰、泰然、天下泰平という熟語がある。その意味は、「つまらない小人(しょうじん)は去っていき、見識ある立派な人がやってくる。吉にして通る」 ・
地天の卦は、上に断線の軽い柔が乗り、下では直線で重い剛が支えるので、バランスがとれているとみるのである。あるいは地は下へ下り、天は上へ上るので天地陰陽が融合し安定するともいう。
三国志という戦記に描かれているばかりではなく、中国共産党一党支配の現代でも、文化大革命という美称のもとで、2,000万人単位の大虐殺があったように、絶え間ない戦乱の大陸である中国で生まれた易経の理想は、安定した平和な社会の実現である。
ウ 天地否
否の意味は、否定、否認、拒否である。
地天泰と逆で、
「まともに人のとるべき道が行われない。君子であっても正しいことが通用しない。見識ある立派な人は去っていき、つまらない小人(しょうじん)がやってくるからだ」
算木の形をみると、上に直線で重い剛があり、下が断線で軽い柔となっている。剛が柔を押しつぶすという将来の危機を告げているのである。
あるいは乾(天)は上へ上り、坤(地)は下へ下るので、天地分裂ともいう。
2 平和志向の教え
(1) 概要
戦乱の中国大陸で生まれた易経は、戦禍(戦争)を嫌った平和志向が強い教えである。
平和志向の根拠は以下の条文である。
(2) 澤天夬
夬は、朝廷で議論し、誠意をもって話しても危うい。中央ではなく、地元から声をあげ決行するのだ。ただし、武力をもちいるのはよろしくない。徳をもってすれば進んでよい。
(3) 離為火
離は、正しければ良い。通る。牝牛のような柔順さを持てば吉。
王が兵を率いて出征する。戦いに勝利し、相手の大将を誅殺する。しかし、捕虜を殺さず寛大に処置すれば、咎めはない。
(4) 地雷復
復は、通る。出るにも入るにも障りはない。友人が集まってきて問題ない。その道を繰り返して行えば、七日で事態が改まる。進んでもよい。
(5) 地水師
師は、正しくなければならない。実力のある司令官に率いれられれば吉で問題ない。進み難きを知って退く。この兵法の常道を守れば咎めを免れる。
(6) 地山謙
謙は、通る。君子であれば終わりを全うすることができる。
謙遜の心がおのずと言動に表れるが。人々に理解されない。兵を動かしとしても、ただ自分の領地内を平定するにとどめるがよい。




