監獄(その4)
ずいぶん前、夜中に二人で海に行き金網の仕掛けを放り投げ、しばらくして引き上げたら緑色の伊勢海老が入っていたけれども、ちょうどその時、顔が丸々と肥えたおまわりがやって来て、もしそれが9インチないなら離してやらなきゃいけないぞと言った。
ダムは、9インチはあるぜと答えたのだが、おまわりが生意気言うなよと言ったので、測ったら10インチあり、そのことで一晩中笑いあったものだ。
あのダムがいなくなってどんな想いがしたか、思い出して涙がいっぱいになった。
女の子が幼いのに泥棒をしているということに心を痛めて、自分の生活が彼女の方に向きを変えていることを改めて思った。
まだその段階までいっていないのに、あやまって人生に汚点を残すことにならないうちに盗みをやめるよう警告しなきゃならないという気がした。
そういう気持ちは強かったが、いざ彼女の前に出た時、何か深刻に思い込んでいるように見えたのか、彼女は恐しそうに見上げるのだ。
瞳の中の涙を見て何も言えなかった。
女の子は10セント銀貨をほうり投げて、ティッシュの包みを掴むと走って店を出て行った。
落ち着かねばならなかった。
店から出て行ってもらいたいと言う程度でいいじゃないか、という気持ちがだんだん強くなった。
盗みをしているとしても、実際そうなのだが、それがどうしたというのだ。
しかし慈善家ぶるのが好みに合わないからといって、しなければならないと思ったことがたいした問題ではないとも考えられなかった。
となると、今度はどういうふうにしゃべっていいのかわからず心配になった。
特に、はじめての人に話しかける時は、常に正確に話せないような感じになって言葉につまるのだ。
ぐっぐっとこもるような音がするようだと少女は真面目に受け取らないだろう。
~続く~